よそいきのメモ帳

人に見せてもいいメモ帳をつづります。

ろくでなし子さん逮捕の報に思う

ろくでなし子さんがわいせつ電磁的記録頒布容疑で逮捕された。

 

3Dプリンター:わいせつデータをメール頒布 警視庁逮捕 - 毎日新聞

3D(三次元)プリンターを使い、女性器を造形するためのデータを頒布したとして、警視庁保安課は14日、自称芸術家、五十嵐恵容疑者(42)=東京都世 田谷区野毛2=をわいせつ電磁的記録頒布容疑で逮捕したと発表した。「わいせつ物とは思わない」と容疑を否認しているが、同課は全国の30人以上にデータ を送ったとみている。五十嵐容疑者は「ろくでなし子」の名前で、女性器をテーマにした創作活動で有名。

 「女性器をテーマにした創作活動で有名」なのに「自称」を職業につける報道のいやらしさが本当に腹立たしい。

 

そして、なによりもどうして彼女をわいせつという罪で逮捕するのだろう?

 

彼女はクラウドファンディングのプラットホームサイトのひとつ、「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で創作活動のために資金を募っていた。そのページ「わたしの「まん中」を3Dスキャンして、世界初の夢のマンボートを作る計画に支援を!」にはこのように記されている。

そもそもわたしがデコまんを作ったのは、自分のまん中の形が異常では?という悩みがきっかけでしたが、それはまん中が日本では長らくタブーとされ、常にモザイクをかけられてきたため、まん中の基本形がわからなかったことが大きいです。
また、まん中が必要以上に隠されてきたために、逆にいやらしさが増幅し、女性にとっては単なる体の一部なのにセックスや卑猥なイメージを勝手に与えられてしまったと感じます。
そこでまん中をもっとPOPに、カジュアルに、日常にとけこませるよう、
リモコンで走るまん中、まん中の照明器具、まん中アクセサリー、iPhoneカバーまん製作など、本格的に活動するようになりました。

 

彼女は、女性器が必要以上に隠されてきたからこそ「わいせつ」になったのであったという。もっとPOPに、カジュアルにすべき、つまり女性器から「わいせつ」というラベルを剥がす作業のために活動していたのだ。3Dデータ配布もその活動の一環だ。

なのに、彼女は「わいせつだから」という理由で逮捕されてしまった。まったく逆なのに。女性器をわいせつというイメージから開放したくて作っているのに、わいせつという罪で捕まってしまった。なんとおかしなことか!

 

また、この事件はほかにも気になることがたくさんある。まず、彼女が3Dデータの配布した、という点で逮捕されてしまったこと。

ネットなどでは「現在警察は銃の複製事件をはじめとして、3Dプリンタが引き起こす事件にナーバスになっていて、彼女はみせしめ的に逮捕されてしまったのでは?」と推測されている。

銃は出力して殺傷能力が照明されてしまえば、それはそれで銃として認められる(って法律になってんのかな?)んだろうけど、女性器の場合はどうなんだろう?

出力した時点ではトナーの色しかないから単色だし、それで女性器、わいせつ物と呼べるのだろうか?

スキャンの質がやたらわるくて、出力してみたらドット絵みたいなジャギジャギの女性器が出てきたら、それはそれで女性器、わいせつ物と呼べるのだろうか?

ものすごい上手なレゴマスターがいて、やたらリアルな女性器をレゴで組んだ。それをバラバラにしてきっととして販売したとしたら、そのレゴマスターは逮捕されたりするんだろうか?

なんていろいろ考えてしまう。

 

そして、ここの事件がクラウドファンディングのサイトで起こったということ。

クラウドファンディングは、インターネットを使って不特定多数の人か自分のやりたいことのための資金を募る運動だ。まだまだ日本では規模は小さいものの、着実に育っているとされている。

今回、事件はクラウドファンディングのプラットホーム「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で起こった。女性器の形のボートを制作するため、ろくでなし子さんはこのサイトで資金を募り、参加してくれた方にお礼として3Dデータを配布したという。それが逮捕のきっかけとなってしまった。

私は、クラウドファンディングはアーティストとアート好きを直接結びつけるとてもよい仕組みだと思っている。いま現在、本当に作品を作りたいと願っているアーティストを直接応援することができる。お金を出すことで、この世界に存在しなかった作品が現実のものになる。とても素敵な、すばらしい仕組みだと思う。ろくでなし子さんの作品も、125人が1,000,000円もの資金を提供し、その資金でボートが制作される予定だ(スケジュールどおり制作が進めばいいけれど…)。

100万円を125人から提供してもらうために、(推測でしかないけど)ろくでなし子さんは数十日の間、朝起きたらネットチェックして溜息ついて、昼も溜息ついて、夜も溜息つく日々を過ごす。支援者が現れたときに心からホッとして、お礼のメール書いて、進捗メー ルを支援者に送る作業に負われる。終わったら終わったで125人の人にお礼の品物を、実物の場合だったら梱包して宛名書きして宅配便に送り続けるという、精神的にも肉体的にもキリキリした生活だったはず。自分はクラウドファンディング複数回お手伝いしてて、単なるお手伝い人員だけれども眠れない日々を何日も過ごした。アーティスト本人にはもっとつらい日々のはずだ。
同じように支援者だって、お金がきちんと集まるかどうか、ボートが制作可能になるかどうかを、アーティストとおなじようにクラウドファンディング終了時までキリキリ胃が痛い日々を過ごす。

そんなキリキリした日々を送った支援者にも捜査の手が及んでいるようだ。

自分の女性器3Dデータを公開、自称芸術家の42歳女を逮捕 - SankeiBiz(サンケイビズ)

ネット上に自分の性器の3Dデータを掲載し、香川県の男性(30)らにダウンロードさせたとしている。

香川県の男性(30)というのは、どうやって浮かび上がってきたのか。125人の支援者のデータは、作家から押収されたのだろうか。それとも別のルートなのか。

というか、支援者はわいせつ物を買おうと思ってろくでなし子さんにお金を送ったんじゃないぞ。ボートを制作したいというアーティストの意志に共感して、資金を提供して、そのリターンとしてろくでなし子さんからのお礼として3Dデータが送られてきた、それだけだよ!法律だと有償、無償にかかわらず頒布が法律に触れてしまうとのことだけどさ。

アーティストも支援者(不特定多数じゃないし…)もわいせつ物だと思ってない3Dデータをやりとりしてて、それで支援者側まで(この時点では逮捕や送検もされてないとしても)いろいろ調べられちゃうって、やっぱりおかしいじゃないですか。

 

まとめられずにツラツラ書いてしまったけど、つまり、アートorわいせつ って不毛な議論で、3Dデータの規制をするならすればいいけど、みせしめ的な逮捕というのは誰も幸せにせず、そしてクラウドファンディングのブームの波が引かないことを願ったりしているのです。長く書いたのにオチがぐだぐだになってしまった。