青山周辺
ロケハン、取材、内覧会ともくもくとこなす日。青山のその地は平日にもかかわらず、ひっきりなしに人々が訪れていた。なくなってからもうすぐ20年。彼の生前の姿を知らない若者がいるのはまあわかるのだが、書物から入って美術館で初めて作品を見る若者の割合も増えていると聞いて驚いた。
つまりそれって、ひと目みたらわかるあの作品もこのオブジェも知らずに育ち、かっこいいことを言うおじさんがアレをつくったのか!と、わたしたちとは逆のプロセスで入っていく人たちがいるってこと。「あの俳優さん、音楽もやってるだ、ピエール瀧って人」みたいな状態。そういう人たちが持つ彼のイメージってどんなものなのかな。学生さんに会って話を聞いてみたい。
その後、ちょっと歩いて休館日のギャラリーでお話を伺う。天然素材の美しさよ!ここは女子的にかなりツボにハマる場所なはず。
で、竹橋へ異動して東京国立近代美術館で「奈良原一高 王国」の内覧会へ。静謐な世界に浸る。
奈良原一高 王国 内覧会へ。オリジナルプリントの美しさよ…。白と黒の間になんとも豊かな色調があるのだ。なのにストイック。
ストイックな世界のなかで生まれる重力が写真のなかに封じ込められている。そして見る人をすきあらば中に引きずり込もうとする。空気がギリギリと緊張している。そんな空間が、写真を並べているだけなのに発生していた。
そんなこんなで月曜からけっこうたいへんであった。
歩き系
朝一番で目白で取材。切手について郵趣家(切手を集めている方をこう呼ぶそうな。英語だとフィラリストと呼ぶのだそうな)の方にいろいろ伺う。
自分も小さかったころ切手にものすごく入れ込んでいて、カタログも買ってもらって、それこそ穴が空くくらいじっくり見つめていたものなのに、いつのまにかフェイドアウトしてしまった。《月に雁》や《見返り美人》があったからこそ広重を小さいうちに知れたわけなので、いまの自分の基礎を確実に作っているものなのに…。
と、しばしば考えるが「小さなころごくごく身近にあったキレイなものだったから。オトナになるにつれて活動範囲が拡がり、キレイの選択肢が増えていったから」ということなのかな?という結論に至った。
選択肢が最初から多い現代のためか、それともメダルやカードなど集めるおもちゃが多いからか、さいきん切手集めを行う若い人はほんとうに少なくなったそうな。まず、親が手紙を出さないし、だから家に切手がない。家に来る手紙もダイレクトメールぐらいしかないから切手を見る機会もない。中学校への出張授業を行われている方によると、中2の時点で「生まれてはじめて切手にさわる」という子もいるそうな。切手のシートがうまく切り離せられないんだって。彼らが社会人になる10年後は、いったいどういう世の中になってるのかな。切手も印紙もなくなっちゃったりするのかな。
ちなみに、いまの切手がテロテロな感じがするのは、紙がコート紙に変わったからなんですって。勝手に印刷技法が変わったのかと思っていた。
その後、早稲田に気になる施設があったので徒歩で行ってみたものの日曜休みで落胆。大正製薬の建物の耐震補強っぷりが格好良かった。むかしからその意匠であったかのよう。
そのまま神楽坂まで歩いて、噂のla kaguへ。
日曜日で人がわんさかいすぎて、じっくり見られず早々に退散。おもてのマーケットで安くキクイモを購入。100円でけっこうな量、素揚げがいいですかね。
うなぎづくし
誕生日でした。ここのところ、ただひたすら生きるのに必死で気がついたら1年経ってるというパターンで、とくに今年はそれが著しい感じ。もっと余裕を持ちたいものだ。
ってなことを考えていたのが伝わったようで、余裕の象徴であるうなぎで誕生日を祝っていただきました。
うかがったのは日本橋 いづもや。うなぎづくしのコースです。
とにかくなにもかもうなぎだった!
まずは胆焼き。山椒の香りが加わるとたまりません。
つづいてうまき。たまごはほんのり甘く、大根おろしはピリリと辛く、それがうなぎを引き立てる。
つづいて白焼き。自分は白焼き初体験がかなり遅かったので、そんなに語れるクチではないのですが、蒲焼きよりうなぎの香りが感じられて好きであります。上品な味がよい。いいうなぎじゃないと難しいのかな?
生醤油焼き。生醤油を塗った白焼きですが、焦げた醤油の香りとうなぎの脂の香りの組み合わせが良いです。ふっくらした食感がたまらない。
そして、こちらが名物のいづも焼き。特別に頼んで作ってもらったという、うなぎの魚醤を使って焼き上げた逸品。うなぎの真髄にふれたような気がした。
いづも焼き(うなぎで作った魚醤を塗って焼いている、このお店のオリジナル) 衝撃の美味
そして、箸休めのうざく。うなぎ焼き焼き三連発で、幸せなのにおなかがキツかったので、この甘酸っぱいうざくはオアシスのように感じた。それにしても野菜少ないコースやね。
そして、しめのうな重。お部屋に来てくれる女将さんは「え、全部食べられたの!?」と驚いていたので、ここまでたどり着けるお客様は少ないのだろう。でもなんとか食べることができました。
でも、最後の柿は全部食べられなかったなー。1つ残してしまった。
焼き方の違ううなぎを連続で食べることで、うなぎの「うなぎネス」がなんとなくわかった気がする。それは、皮と身の間にある脂の香り。あの香りこそうなぎの醍醐味なんだ。そんな気がしている。香りがよくなければ、そのうなぎはいくら身がふっくらとしていても美味しいと感じられないんだ。
そんなことを考えさせる、うなぎディナーでありました。ごちそうさまでした。
撮影
ようやく撮影初日。まずは駒場で撮影です。
午前中の撮影場所は、床が建てられた当時のままになっているそう。そのため、土足厳禁、裸足厳禁、スリッパも禁止なのでありました。そうとうな厚手ソックスでのぞみましたが、でもやっぱりちょっと冷えたね。
その後、鶴川で撮影第二弾。庭の葉っぱがいい具合に色づき雰囲気を出してくれていた。先日のロケハンから一週間しか経っていないのに、秋がくるのはけっこう急だ。
そして物欲魔神に襲われる…。
昨日の取材先で衝動買いしたグッズ。四角い缶バッジって作れるのですね。七宝みたいでおもしろい。
その後、都心に戻ってそのままお台場のカルチャーカルチャーに行って、Ingressのイベント。前日に誘われたので急遽伺うことになったのです。疲れMAXだったため、新橋辺りで帰ろうかとかなり逡巡したのですが、googleの中の人トークが伺え、なおかつステッカーももらえたので非常に満足。
Ingressのイベントに行ったら特別ゲストにgoogleから川島さんがいらしていてステッカーをもらいました。
自分としては、Ingressのユーザーにおっさんが非常に多いという指摘や、Ingressをやってくることで芽生える「テリトリー感」の話がおもしろかった。自分たちが勝手に感じる「領土」の感覚は、国境のない国で育った日本のユーザーにとってはかなり新鮮なんじゃないかしら。
そんなことを思いながら家帰ってばたんきゅう。
大移動
この日もロケハン。
まずは駒場。ここでも、いままでギモンに思っていたものの、どこにも書いてなかったことを知れて感慨にふける。中の方たちは当たり前だと思っているから発信することもなかったこと。けっこう大切だと思うので、しっかり伝えたいと思う。
ロケハン終わって、見学してたら、そこに在籍している大学の先輩がわざわざ来てくれ、声をかけてもらう。覚えていただけているなんて! 変な名前(って理由だけじゃないと思うけど)でよかったです。
続いて目黒。その地はかつて高橋是清が持っていた敷地だったとのこと。その名残がじつはけっこう残っていることを知り、うまく組み込めないかな…と思ったり。購買部にも案内してもらって、名物店長さんとお話。
その後、上井草へ。このあたりまで来るとだいぶスタミナが足りなくなってくるものの、やっぱり場所とその施設が所有するもののパワーが素晴らしくて元気をとりもどす。やっぱり原画はよいものです。
上井草はアニメの街らしくて、駅前からツッコミどころ満載の像があったりするのだが、いかんせん元気不足であたりを徘徊できないのであった…。残念。
で、いったん大久保ドトールで作業をしてから新宿で会議。もうかなりヤバい感じでしたが、なんとか死なずにすみましてん。
次の日は朝から撮影のため、23時ころ帰宅してから原稿長め2本と短め5本と再校1本と企画書1本を提出したら朝になっていたのでけっこう危ない。
金と銀
午前中はロケハンと取材。何回も伺っている場所なのに、その施設の設計の狙いなど、関係者に伺うと新しい発見が多く出てくる。そこを引き出すためには、入念な下調べも必要なわけですし。ということを、つくづく実感。
その後、山種美術館で「輝ける金と銀―琳派から加山又造まで―」を鑑賞。ツイートではざっと
特別展「輝ける金と銀」。私たちのこころの底にそよそよと流れているヤンキーイズムを自由自在に操れるようになることが風流な人の条件なのかもしれない。横山大観の金箔めっちゃつかいつつもつつも裏箔仕上げで淡い輝きの作品&銀箔めっちゃつかいつつ描くのは椿の花一本の作品を見て感じた。
— 浦島もよ (@monoprixgourmet) 2014, 11月 12
金と銀だけでもここまで表現に幅を持たすことができることをきちんと解説されていて、とてもわかりやすかった。反射する光が出す色や美しさは印刷でもモニタでも決して出せないものだから、実物を見るしかないのだ。
— 浦島もよ (@monoprixgourmet) 2014, 11月 12
このように書いたのだが金と銀って、それだけで大げさじゃないけど箔を使えば何百通りもの表現が可能なのだ。そして、すべてに「金や銀を置く理由」を持っている。川端龍子のキレッキレな《草の実》も、岩佐又兵衛の《官女観菊図》も、豪華な賑やかしのためではなく、必要だから金が置かれている。画家たちが大切に、ここぞ、というところで使っているのがわかるので愛おしいのですよ。
ということで、かなり満足してからカフェで和菓子。いままで、オリジナル和菓子には抹茶を合わせていたけど、コーヒーがことのほか合うという情報をこの日いただきコーヒーと合わせてみたのでした。
財布に200円しかはいってなくて、慌ててコンビニに走ってお金おろしていただきました。柴田是真《浪に千鳥》の和菓子。中は胡麻あんです。コーヒーに合うのです。
波に千鳥は漆の赤と黒の対比が美しい作品で、お菓子のように青は全く使われていないんだけど、なかの胡麻餡の黒さが青に引き立てられていたので、これはこれでアリなんじゃないいかと思いました。
午後は某所でブログに関する説明会。いろいろ伺うと、とりあえず自由なうちにこのブログで遊べることは遊んどいたほうがいいのかなって思ったりする。
その後、手前のビルでチーズフェスタやってたり、スバルの新ショールームがいろいろ遊べたりする発見をしつつ、この日もお疲れ様でしたという感じです。
東京上半分
朝イチで谷中ロケハン。山手線が近年稀に見る徐行運転を行ったため危うく遅刻しそうに。日暮里の坂はダッシュするのにはけっこうきつい。
なかなかの荘厳スタイルの現場は、平日はほとんど人がいない。天窓から陽の光が優しく降り注ぎ、ここちよい空間。うまい具合に撮影日程が確保できてよかったよかった。リニューアル後に公開がはじまった和室部分も趣きを感じる。もう少し紅葉がすすんでくれるといいんだけど……。
その後、要町でロケハンその2。曇天の要町をむりやり褒めるとすると、パリ8区と9区の間っぽい感じ。大通りの道路幅はやたら広く、しかし沿道にある店はかなりしょぼい。ちょっと角を曲がると住宅地だらけで店そのものが存在しなくなる。そんな感じがパリっぽさを感じたんだけど、よく考えたらわざわざ褒める義理はないんだった。ロケハンはいい感じに終了。おいしいケーキを食べる。
お昼はいつも小鍋会でおじゃましている、なんてんカフェ。小上がりはかなりの大盛況。居心地がよい空間には人が集うのだなあと実感。
要町で取材だったのでなんてんカフェへ。はじめての昼間、はじめてのカウンター席。豚の利久焼おいしい。
里芋のグラタン、カレー風味の春雨、そして十六穀ごはんも非常においしかったっす。
その後、15時のアポなので歩いてIngressしながら自由学園明日館へ。明日館は平日はじっくり見学できるよい場所。撮影もOK。おかし・お茶もGOODなよい場所。自分が行ったときは、なにかの雑誌の撮影中だったようで、きれいなお姉さんが何人かいらっしゃっていた。
朝のロケハン場所もそうだけど、平日と休日の人の緩急はすごいものがあるな…。
そんなこんなで代々木上原まで行って、用事すませて、帰ってくると夜になってるわけだ。